50代のある日、スーパーの駐車場で100対0事故にあった。
俺は完全な被害者。なのに、保険でほとんど何も残らなかった。
その出来事をきっかけに、俺は当時の保険屋を見限った。
車屋の保険に切り替えて、もう10年以上経つ。
60代になった今、振り返って言える。
保険屋を変えてよかった。
スーパーの駐車場で、100対0事故
スーパーの駐車場に車を停めていたときのことだ。
おばさんがアクセルとブレーキを踏み間違え、バックでそのまま突っ込んできた。
こちらは完全な被害者。
いわゆる 100対0の事故だった。
車は前面大破した。
ただ、正直に言うと、本当に納得できなかったのは「その後」だった。
経済的全損で、保険金はほぼゼロ
俺の車は古く、事故当時の車両時価はせいぜい20万円ほど。
一方、修理費の見積もりは50万円近かった。
整備士には、こう言われた。
「直せないことはないけど、シャシーが歪んでいる。完全には戻らない。乗り続ければ、タイヤの片減りやハンドルを取られるなど、不具合が出る可能性はある」
結果、廃車にした方がいいという判断になった。
このときに知ったのが「経済的全損」という言葉だった。
修理費が車の時価額を上回ると、保険会社は 時価額までしか払わない。
俺の場合、車の時価が20万円だから、保険金もそこまで。
修理費50万円との差額は、誰も埋めてくれない。
100対0で、相手が完全に悪くて、車は壊されて、なのに何も残らない。
代車は、たった2日しか出なかった
廃車になって、車がなくなった。
保険会社が手配した代車は、2日だけ。
それを過ぎたら、自分で何とかしろ、ということだった。
調べてみると、自動車保険の 代車費用特約は通常15〜30日が業界標準だった。
2日というのは、明らかに短い。
もう10年以上前の話なので、当時の証書は残っていない。
俺が代車費用特約に加入していなかった可能性もある。
もしそうなら、それは付けていなかった俺の責任だ。
ただ、
不要そうな特約は色々勧められて入った記憶はある。
その一方で、代車費用特約のような 本当に困ったときに効く特約を、丁寧に説明された記憶はない。
「どうせくだらない特約で、ぼったくられていたんだろう」
そういう感覚だけが残っている。
田舎暮らしで車がないのは、足をもがれたようなものだ。
スーパーにも行けない。病院にも行けない。
2日で次の車を決めるなんて、できるわけがなかった。
救ってくれたのは、近所の修理屋だった
保険会社の代車期限が切れたあと、長年世話になっている車屋(修理屋)に相談した。
「次の車が決まるまで、うちのを乗っていっていいぞ」
あっさり、そう言ってくれた。
救われた。
あのときの一言は、今でも忘れない。
「じゃあ、同じ車を持ってきてくれ」
俺は保険会社に言った。
「同じ車を持ってきてくれ。完全に壊されたんだから」
もちろん、そんなことはできない。
そのとき初めて思った。
ああ、保険って、思っていたほど味方じゃないんだな。
もらい事故は、自分の保険会社が動いてくれない
あとで知ったが、100対0のもらい事故では、自分の保険会社は相手の保険会社と示談交渉ができない。
これは弁護士法72条の問題で、業界ルールだ。
つまり、被害者は自分で相手の保険会社と直接交渉しなければならない。
もしくは、弁護士に頼むしかない。
「弁護士特約」を使えば、その費用は保険でまかなえる。
俺もそれは知っていた。
車屋がたまたま、保険アジャスターだった
幸運だったのは、相談した車屋が 保険アジャスターでもあったことだ。
アジャスターというのは、損害保険協会に登録された 事故の損害調査の専門家。
整備知識・見積もり・過失認定・示談交渉まで担う。
事故車を見て修理代を算出し、保険金を決めるところまで関わる人だ。
資格は厳しい。
見習試験の合格率は3割ほど。
2級まで取るのに最短6年。
1級は試験すら開催されていないため、保有者0人。
「腕利きアジャスター」は、国にも多くない。
そんな専門家に、地元で偶然出会えていたのは運がよかった。
そのアジャスターが、俺にこう言った。
「弁護士入れても、無駄。経済的全損は判例で時価額までしか取れない。勝てないっさ」
淡々とした口調だった。
でも、業界の現実を知っている人間の言葉だった。
俺はそれで、戦うのをやめた。
保険屋を見限って、車屋の保険に変えた
事故処理を経て、俺は決断した。
「この保険屋とは、もう付き合えない」
代車2日で放り出される。
経済的全損で何も残らない。
もらい事故でも自分の保険会社は動かない。
困っているときに、これだ。
俺は 保険屋を変えた。
切り替えた先は、あの車屋——アジャスターが扱う保険だった。
困ったときに、顔の見える人間が対応してくれる安心感。
それが、俺の選んだ「保険」だった。
60代の今、振り返って思うこと
あれから10年以上経つ。
幸い、その後は大きな事故にあっていない。
でも、もし何かあったときに、顔の見えない保険屋に相談する自分と、知っている車屋に相談できる自分では、安心感がまったく違う。
保険は、契約書の中身だけで選ぶものじゃない。
困ったときに、誰が動いてくれるか。
そこまで含めて「保険」だ。
60代になって、そう思うようになった。
あの事故で保険屋を変えた選択は、正解だった。
保険屋は、変えられる
同じ世代に伝えたい。
保険屋は、変えていい。
合わない保険屋に、惰性で更新を続ける必要はない。
対応の悪い相手と、何十年も付き合う理由もない。
困ったときに動いてくれる人を選んでいい。
俺は変えた。10年経って、後悔はない。
参考:自動車保険の見直し
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